”共感”の認知症ケア「バリデーション療法」とは?

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高齢社会にある日本で、増え続けている認知症患者。団塊の世代が全員75歳以上になる2025年には、患者数が700万人に達する見込みです。
参考:厚生労働省「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」概要(2015年1月)

認知症に対するケアやリハビリの重要性は、これからますます高まっていくことでしょう。
今回の記事ではそんな認知症に対するケア技術「バリデーション療法」についてご紹介いたします。

バリデーション療法とは

バリデーション療法
バリデーション療法とは、主にアルツハイマー型認知症の患者さんに用いられるコミュニケーション技法です。「バリデーション」は「確認する、認める」という意味合いの単語ですが、ここでは認知症患者さんの経験や感情に対して共感し、力づけるというニュアンスで用いられています。
1963年、アメリカのソーシャルワーカーであるナオミ・フェイルによって生み出されました。

どのような特徴があるか

バリデーション療法
バリデーション療法では、認知症患者さんの訴えや行動……例えば突然騒いだり徘徊したりすることにも、「何か意味が隠されている」と捉えます。なぜそのような行動をとるのかを考え、共感して接することに重きを置いているのです。

認知症になって言葉を理解できなくなったとしても、患者さんは「相手が自分の話を聞いてくれているかどうか」はわかります。発言に対して適当にあしらわれたと感じれば、当然傷付きますし、不愉快な思いもします。
バリデーション療法は患者さんと真摯に向き合い、彼らの見ている世界を教えてもらう……つまり「傾聴」して寄り添うことで、信頼関係を深めていくのが特徴です。
それによって、患者さんが本当は何を訴えたいのかを理解できるようになります。

基本的な14のテクニック

バリデーション療法

バリデーション療法には基本とされている14のテクニックがあります。
どのようなものが提唱されているのか見ていきましょう。

センタリング
認知症患者さんに共感し、同意できるように精神を統一します。深呼吸などを繰り返して気持ちを落ち着けましょう
集中して行いましょう。
オープンクエスチョン
オープンクエスチョンとは「はい」「いいえ」で答えられない、5W1Hでの回答が必要となる質問のことです。
自由に回答できる問いかけをすることで、患者さんの考えを具体的に知ることができます。
リフレージング
リフレージングとは、相手の発言や言葉を同じように繰り返すことです。
例えば「これはもういらない」と言われたら、「これはもういらないですね?」と返します。声の大きさや口調も近づけられるとなお良いですね。患者さんは自分の発言を確認できると安心します。
アイコンタクト
患者さんと視線を合わせ、長く見つめましょう。
親しみを込めた眼差しを向けることで、患者さんの不安を取り除くことができます。
タッチング
肩に手を置いたり、両手でそっと頬を包み込んだり、患者さんに優しく触れることで相手の不安を取り除きます。
ただし、患者さんが触れられることに抵抗感を持つようであれば中断しましょう。
極端な表現を使う
会話の中で最高・最低、最悪など、極端な表現を用いてみましょう。
患者さんの感情を発散させる補助ができます。
反対のことを想像させる
訴えに対して反対のことを想像してもらうように促しましょう。
困難から立ち直った若い頃の記憶を振り返り、その解決方法を導き出すことができます。
レミニシング
会話や質問を過去に結び付け、懐かしい思い出話をします。
日時など、自分の置かれている状況がわからなくなる見当識障害を持つ患者さんが、昔自分で行っていたことや考えていたことを再び取り戻すきっかけになります。
曖昧な表現を使う
「それは面白いですか?」「その人が困らせてくるんですか?」など曖昧な表現を用いることで、患者さんの発言が聞きとれなかったり意味を察しきれなかったりしても、コミュニケーションをとることが可能です。
患者さんの好きな感覚を理解する
視覚・触覚・嗅覚などの中から、患者さんの好きな感覚を見つけましょう。「ふわふわ」「きらきら」など、それを連想させる言葉をコミュニケーションで活用することで、患者さんは「自分を理解してくれている」という安心や心地よさを感じることができます。
はっきりとした低く優しい声
患者さんと話す際には、低い声ではっきりと話すことを意識しましょう。ゆっくりと落ち着いた優しい口調も、患者さんに安心感を与えることができます。
高齢者は高音をうまく聞き取れません。相手に合わせて、きちんと伝わる話し方ができているかどうか注意しましょう。
音楽を使う
患者さんが昔好きだった音楽は、忘れてしまった過去を思い出させるいい刺激になります。気持ちを落ち着かせることに繋がりますので、積極的に音楽をかけていくと良いでしょう。
ミラーリング
ミラーリングとは、相手の表情や声の大きさ、行動などを真似ること。徘徊時は一緒に歩き、立ち止まれば一緒に止まる……こうすることで、言葉以外のコミュニケーションを取ることができます。
非言語でのコミュニケーションによって、患者さんがどう考えて動いているのかを感じ、気持ちを察することができます。
満たされていない人間的欲求と行動を結びつける
患者さんが不穏な行動・言動をするのは、「愛されたい」「人の役に立ちたい」「感情を発散させたい」という人間的欲求のいずれかが満たされていないことが原因かもしれません。
どれが理由に当てはまるのかを考えることは、患者さんの行動や言動に隠れた本当の訴えを知ることに繋がります。

バリデーション療法の効果

バリデーション療法

関西福祉大学の都村尚子教授の研究によれば、バリデーション療法によって、普段話さない患者さんの発語が増える・笑顔が見られるようになる・情緒面が安定するといった変化が見られたといいます。
また、バリデーション療法によって、高齢者に向き合う介護者にも変化が起きたとされています。バリデーション療法を実施していない時でも認知症高齢者への接し方が変わったり、利用者さんの状態について理解が深まったりと、日常におけるケアの姿勢改善にも効果があるようです。

そのほか、患者さん以外の接し方……同僚や友人に対しての態度に変化があった介護者もいたようです。
バリデーション療法の効果は認知症患者さんだけにとどまらず、幅広い対象者に有効であると考えられています。

参考:関西福祉科学大学紀要「認知症高齢者ケアにおける バリデーション技法に関する実践的研究」都村尚子ほか(2014年1月)

どのような場面に使えるか?事例

バリデーション療法
それでは、どのような場面でバリデーション療法が使えるのか、事例を見てみましょう。

「部屋に誰か入ってきた!」と訴える患者さん

認知症の患者さんは不安などから幻覚・幻聴に苛まれ、「部屋に誰か入ってきた!」「知らない人が部屋にいる!」と訴えかけてくることがあります。そのとき、「そうですね、一体誰でしょうね」と返すのは望ましくありません。患者さんはそんな介護者の態度に、話をはぐらかされた、ごまかされたと感じてしまうからです。

利用者さんから訴えがあった場合には、「それはどのような人ですか?知っている人ですか?」「部屋のどこにいましたか」など、利用者さんの見ている世界に対して理解しようとする姿勢を見せましょう。相手の感情を理解することで不安要素を取り除けたり、話を真摯に聞くことで患者さんの気持ちを落ち着かせたりできます。

「家に帰りたい」と訴える患者さん

帰宅願望から「家に帰りたい」と訴える患者さんは少なくありません。この時、ケアを提供する側は「ここがあなたの家ですよ」とごまかしたり「今日はもう車もないので戻りましょうか」と気をそらしたりすることもあるでしょう。しかしこうしたやり方は、認知症患者さんに「嘘をつかれた」という気持ちを与えてしまいます。

バリデーション療法では、「家はどこですか?」「ご家族の構成は何でしたっけ?」などの会話をすることで、患者さんがどうして自宅に帰りたがっているのかを探ります。介護者が患者さんを理解しようとする姿勢を見せることで、相手も落ち着いた状態になり、自分がどうしてここにいるのかもわかるようになることもあるのです。

バリデーション療法の資格

バリデーション療法
バリデーション療法の重要性が注目される昨今、日本で唯一の公認団体である公認日本バリデーション学会では、バリデーション療法のプロフェッショナルとして認められる者に対して「バリデーション・ワーカー」の資格認定を行っています。

東京・大阪で開催される全6回(各2日の合計12日間)のスクリーニングと実践学習を受講し、実践実習や課題提出、筆記・実技試験によって合格を認められると、バリデーション・ワーカーの資格が与えられます。

  • 第1回:オリエンテーション/バリデーションに必要な基本的人間観
  • 第2回:第1段階(認知の混乱)で使われるすべてのテクニックの説明、実演と実践演習
  • 第3回:第2段階(日時・季節の混乱)で使われるすべてのテクニックの説明、実演と実践演習
  • 第4回:第3段階(繰り返し動作)で使われるすべてのテクニックの説明、実演と実践演習
  • 第5回:第4段階(植物状態)で使われるすべてのテクニックの説明、実演と実践演習/バリデーションと他の手法の違い
  • 第6回:最終試験(筆記・ビデオによる実技試験)

講義は10時~16時半で開催されます。
テキスト代込みの受講料29万5千円を払わなければ申し込みできませんが、高価な講座にもかかわらず毎回満員で開催されています。バリデーション療法への関心がどれほど高まっているか窺い知れるでしょう。

認知症患者はこれからも増え続けていくことでしょう。ぜひこの機に、バリデーション療法について学んでみてはいかがでしょうか。

参考サイト

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