訪問リハビリのセラピストに求められることって?

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理学療法士。回復期リハビリ病院に4年間勤務し、入院患者様や外来を担当していた。「自宅に帰る」や「安全に生活できる」を目標にリハビリを提供していたが、「はたして私はちゃんと生活を考えられているのか?」と疑問を持ち、実際に生活場面に関わってリハビリを提供していきたい!と訪問看護ステーションに転職。リハビリを提供する上で機能訓練や動作指導のみならず、人と人との関係を大切に利用者様と関わっています。

初めまして、理学療法士の浅野綾子と申します。
私は回復期病院に4年間勤務し、その後訪問看護ステーションに転職しました。在宅にてリハビリを提供するようになって2年目になります。

最初の職場に回復期を選んだ理由は、「長く患者さんと関わりたかった」からです。マンツーマンでしっかり患者さんと向き合い、精神的なサポートも含めリハビリを提供できたらと思い就職しました。
回復期病院では「自宅に帰る」ことや「安全に生活する」ことなど、退院後の生活を考慮して目標を立て、リハビリを提供します。しかし、ある時「私はちゃんと患者さんの生活を考えられているのだろうか?」と疑問を持つようになりました。そこで実際に生活の中でリハビリを提供できたらと思い、転職に至りました。

訪問リハビリは、病院とは大違い!


訪問リハビリは病院に比べると、介入する時間も頻度も変わります。そもそも介入する際の目標が変わります。病院でゴールにしていた「自宅に帰る」の後、どう生活をしていくかを具体的に掘り下げ目標にしていきます。もちろん在宅だからとはいえ生活面への介入ばかりではなく、身体機能面の改善についても問題点を挙げて取り組みますが、身体機能面の変化や動作の改善に至るまでに時間がかかる印象です。
そんな中で実際にどのように介入をしているのかを、紹介したいと思います。

どれが正解なんてことはない


訪問看護ステーションにリハビリの依頼が来る理由は、本当にさまざまです。

・病院を退院して自宅に帰るが、まだ動作安定するためにリハビリが必要。
・特別な疾患はないけれど、なんだか最近外出の頻度が減って歩きづらくなって来たため主治医に相談したところ、訪問リハビリを提案された。
・自宅内での転倒が増えてきているため、転倒しないように動作指導と福祉用具の選定をお願いしたい。

などなど……

また、病院のリハビリでは症状が明確にあるのに対し、訪問リハビリで聞かれる主訴は「なんか最近急に動けなくなってきた」「動く時に腰や肩や膝が痛くて、我慢できる痛みだけどなんか不安になってしまう」など、曖昧な訴えが多いです。
これらの依頼内容や実際に評価させてもらって抽出した問題点に対して、必ずしも機能訓練にて筋力増強や関節可動域の維持を図り、動作指導をしていくという流れが有効であるわけではありません。
訪問リハビリでは病院のように毎日介入できるわけではなく、関わる時間がとても限定されています。そんな中で利用者さんの生活をサポートするためには、福祉用具の選定や環境設定に最初からアプローチしたり、デイサービスを提案させてもらい外出の機会を作ったりと、さまざまな方法でアプローチをしていきます。

こうした観点からアプローチや提案をしていくことは、病院に勤めていた時にはあまりないため、転職したばかりの頃はなかなか大変に感じました。

痛みとはなんなのか?


私が訪問看護ステーションに来てからすぐに、大腿骨頸部骨折にて人工骨頭置換術を施行し、自宅退院され自宅で生活している方を担当させていただいたことがありました。
この方の訴えは「とにかく手術した股関節が痛い。何もする気が起きないの」。評価を行なったところ、筋力低下によって歩行やその他の動作時に不安定感を出していることがわかりました。

さっそく私は痛みのある股関節周辺の筋肉をほぐしてトレーニングを指導し、痛みの軽減を図る動作指導を行なっていきました。介入前後で歩容や動作は変化し、良い方向に向かっているように捉えられます。
しかし利用者さんからは「全然変わらない。痛いまま」と言われてしまいました。このやり取りはしばらく続き、痛みを軽減できない申し訳なさと、どのアプローチも有効ではない焦りで、私自身も少し落ち込むことがありました。

患者さんが発する「痛い」に、隠されているもの


そんな中、いつものようにその日の体調を伺いながらリハビリを行なっていると、利用者さんの発する「痛い」に少し違和感を覚えました。本当は痛いんじゃないでしょ?という疑いではなく、もしかしたら「痛い」だけではないのではないか?という違和感です。
その違和感を検証すべく、利用者さんから今まで以上にお話を伺い、アプローチ方法を変えていきました。
そうすると利用者さんから「これは……痛いじゃないかもしれない……なんかモヤモヤする感じね」と痛みの表現に変化が出てきました。この方は、「だるい」や「重い」や「刺さる感じ」などの詳細な区別でなく、すべての痛みを「とにかく痛い」と表現されていたのです。

実は、こうした利用者さんはとても多いです。痛みの部位や強度や質などを言葉で上手く表現できる人はなかなかおらず、間違った捉え方をしている方がほとんど。とくに在宅分野は症状としては慢性期であることが多いため、ご本人もいつ・どこで・何をしてこんな痛みになったのかわからないと言う方がいます。
上記の利用者さんは、発する「痛い」が少しずつ区別されるようになると、介入前後の変化をご自分でも実感できるようになってきました。当初は「何もする気が起きない」と話されていましたが、現在はデイサービスにも通われるようになっています。

訪問リハビリに求められるもの


慢性期は、回復期と違って怪我や病気の症状は落ち着いています。症状へアプローチを行なって、まったく変化がない……ということはありませんが、変化が出るのに時間を要します。
そんな中で、利用者さんが何をどう感じ生活しているのか、見て取れる変化だけでは察しきれないことが多いです。症状の変化や身体面の変化だけでなく、利用者さんの言葉で上手く表現できていない変化を汲み取り、介入していくこと。それが、在宅でリハビリを提供していく上では大切だと思います。

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