「それでも料理がしたいのよ」片麻痺患者さんの家事動作、どう指導する?

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1989年生まれ。小学校時代より体育教師を目指し、高校で体育コースへ進学。しかし部活動での怪我・入院を機にリハビリ職に興味を持つ。高校卒業後、横浜市内の専門学校に進学し、2010年作業療法士免許取得。回復期を4年間経験し、一般企業へ転職。その後訪問リハビリに進む。

和田有美

現在、日本にいる脳梗塞の患者数は約117万人。脳血管疾患で死亡したうち、6割近い患者さんが脳梗塞だと言われています。
脳神経外科でリハビリを受けにくる患者さんも、おおよその方が脳梗塞による片麻痺や高次脳機能障害を発症した方でした。年齢はさまざまですが、私の勤務していた回復期病院では、70~80代の後期高齢者の方がほとんどでした。
その中には一人暮らしをされていて、ご自宅で家事をしながら生活されている方も多くいらっしゃいます。

今回は脳梗塞後遺症による片麻痺を発症した患者さんに対する、家事動作訓練についてご紹介します。

片麻痺患者さんの予後

脳梗塞後遺症による片麻痺の重症度は、Ⅰ~Ⅵの6つのステージに分類されます。
私の経験上、ステージⅤ・Ⅵの方は、ぎこちなさはあるものの家事動作を再獲得できる方が多いです。
一方、ステージⅠ~Ⅳの方は、麻痺側上肢が利き手か非利き手か、分離運動の状態や感覚障害の有無、脳梗塞の重症度、さらに認知機能の状態や高次脳機能障害の有無・程度、疼痛の状態、筋緊張、発症時の年齢など……さまざまな状態を評価し、今後の予後を推測する必要があります。

麻痺側上肢が弛緩しており随意運動もほとんど見られないステージⅠ~Ⅱの患者さんでも、日々のリハビリによりステージⅤまで回復して自宅家事ができるようになったケースもありました。
必ずしもステージが低い=巧緻動作・上肢運動は困難というわけではありませんので、担当医やチームのメンバーと相談しながらリハビリを進めていく必要がありますね。

利き手交換にともなう家事動作について

女性患者さんの場合、「また料理を作りたい」と希望される方は多いです。
包丁は利き手で持つのが一般的ですが、麻痺した側が利き手側であり、その麻痺のステージの回復が見込めなさそう・または包丁操作がうまくできない場合は……非利き手での包丁操作を指導することになります。

しかし、病院での訓練には限界があります。患者さんのご自宅にある調理道具をすべて把握して、キッチンの広さや使い勝手を再現するのはなかなか難しいですよね。そこに悩むセラピストは多いと思います。

そのような場合、私はまず患者さんのご家族さまから、キッチン周りの環境(シンクの高さや広さ、キッチンの使用頻度など)に関する情報を収集します。また、よく作る料理を聞いて入院中に作ってもらう「調理訓練」を実施したり、キッチンで使用できる滑り止めマットや取っ手が取り外しできる鍋、クギ付まな板などの福祉用具のご紹介・ご提案したりします。
ご本人さまには上肢が麻痺していても作りやすい料理の指導(煮込み料理など)や、危険性の少ない動作指導など十分にお伝えします。

注意すること

高齢になってからの利き手交換は今までの習慣を変える必要があるとともに、ケガをしないよう注意力や集中力も必要とされるため、精神的にもとても大変です。
ガスや火、刃物を使う調理動作、色んなところに危険が忍んでいます。そのため、ご自宅に帰って料理を再開する際は、最初は1人で行わず、ご家族やヘルパーさんの見守りの下実施していただくようお話していました。

また、長年使用していたキッチンも病気になってから使ってみると「あれ?なんだか使いにくい……」と感じる患者さんも多いです。そのため、最初は包丁を使わずに、お米を研いだり洗い物をやっていただいたりしていました。
少しずつご自宅での生活に慣れてきたら、見守りの下野菜を切ってみたり、よく作っていた料理を作ってみたり……徐々にレベルアップしながら、慌てずゆっくり自信を回復していただければ、と思います。

患者さんと一緒にできる動作を増やしていく

麻痺側上肢のステージが同じ患者さんでも、認知機能や高次脳機能障害の影響などから、指や上肢の動きはそれぞれ違います。
その患者さんがどのくらい無理なく動けるか、動かせるか。体力面はどうか。患者さんのフォロー・協力できる方がいるか……なども評価対象となります。
そのため、セラピストは患者さんと一緒にやりやすい動作を探しながら、プロの視点でアドバイスをしていく必要があります。

それでも自宅での生活に不安がある患者さんの場合は、訪問リハビリの利用をお勧めしています。
回復期病院に勤めているセラピストでは、ご自宅での生活をフォローするのに限界があります。
そんな時は在宅サービスに引き継ぎ、患者さんの情報を正確に伝えて、その後の生活を支援するのも大切な役割であると思います。

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