「デュアルタスク」で脳を活性化して、認知症を防ぐ方法とは?

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「認知症」は後天的な脳の障害により、認知機能が低下する疾患です。我が国における認知症高齢者の数は年々増加の一途を辿っており、2025年には患者数が700万人を超えるとも言われています。
参考:厚生労働省 「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」概要(2015年1月)

今後の日本において、認知症の予防および症状改善のためのリハビリは、欠かせないものとして重要視されることでしょう。
そこで今回は、認知症高齢者に向けた理学療法・作業療法に取り入れられる「デュアルタスク」についてまとめました。

デュアルタスクとは?

デュアルタスク

デュアルタスクとは、2つの動作を同時に行う「ながら動作」のことを指します。
考え事をしながら歩く、テレビを見ながら皿洗いをする、料理をしながら話すなど……私たちは普段の生活で、複数の動作を独立させた状態で同時にこなしています。

しかし加齢や認知症の発症によってデュアルタスクが衰えると、
「歩行中に話しかけられて足を止めてしまう」
「テレビに夢中になって皿洗いの手が止まってしまう」
など、さまざまな動作を同時に行えなくなってしまいます。

デュアルタスク能力の低下が転倒や運動不足を招き、結果として要介護状態・認知症の悪化を引き起こしてしまうのです。
機能保持のためには、「デュアルタスクトレーニング」を積極的に行っていくのがよいとされています。

デュアルタスクトレーニングとは?

デュアルタスク

デュアルタスクトレーニングとはその名の通り、2つ以上の課題を同時にこなす訓練です。
高齢者の認知症・転倒予防に効果があるとして注目を集めています。

脳への血流量を増やす、注意を分散させる力をつけることが目的。
衰え始めた高齢者のデュアルタスク機能を高めるべく、さまざまな理学療法・作業療法のプログラムに取り入れられています。

どんな人に必要なのか?

デュアルタスク

脳機能低下の予防という観点では、すべての高齢者がデュアルタスクを鍛えるべき対象といえます。
デュアルタスクはどうしても加齢に伴って衰えるものですし、複数の動作に対する注意分散がおろそかになるほど、転倒・骨折のリスクは高まります。
認知症患者さんではなくとも、その後の要介護リスクを考えればぜひ行っておきたいトレーニングです。

しかしその中でも、「移動能力が高い高齢者」は特にデュアルタスクトレーニングが必要であるといえます。
屋内でも補助具を必要とする高齢者の場合、デュアルタスク能力以上にバランス能力・筋力の強化が優先されるからです。
目安のひとつとして、要支援者はデュアルタスクトレーニング・要介護者はバランス能力訓練を優先するのがよいでしょう。

デュアルタスクトレーニングのしくみ

デュアルタスク

認知症患者さんの脳は、損傷を受けたことにより血流量が著しく低下しています。酸素や栄養を運ぶ血液が不足することでますます脳の働きが悪くなり、結果さまざまな機能低下を引き起こしてしまうのです。
そのため認知症のリハビリでは、脳の血流量を増やすための運動や脳の活性化が主な方法として考えられてきました。

デュアルタスクトレーニングでは複数の課題が課されるため、「運動」と「思考」の訓練を同時に行うことができます。
これにより脳の司令塔とも呼ばれる最高中枢・前頭葉を活性化し、血流量も増加。状況判断力の低下を防げるようになるのです。

簡単にできるデュアルタスクトレーニングの一例

デュアルタスク

ここでは、手軽に実践できるデュアルタスクトレーニングについてご紹介いたします。

足踏みクイズ

患者さんには椅子に浅く腰掛けてもらい、足踏みを続けた状態で
「都道府県をできるだけたくさん言ってください」
「【あ】から始まる単語をたくさん上げてください」
といった簡単なクイズを出します。

足踏みという運動課題と、クイズによる想起という認知課題とを、同時に頑張ってもらうデュアルタスクです。

あまり長い時間足踏みを継続させてしまうと、瞬発力や体力向上などのトレーニングになってしまいます。すると運動課題の方に努力が傾き、デュアルタスクの向上につながりにくくなります。注意しましょう。

色の音読

カラフルに着色された漢字が並んでいるこちらの画像。よく見ると、「着色」と「漢字が表す色」が異なっているものが多々あります。
この画像を左上から順に、「色の名前で」音読していくトレーニングです。たとえば一番左上の「緑」ですが、これは黄色で着色されていますよね。そのため、この場合は「黄色」と答えるのが正解です。

制限時間30秒の中で、「色」「文字が持つ意味」という複数の情報を瞬時に選択……そして音読する、というデュアルタスクです。

動画でもデュアルタスク運動をチェック!

そのほか、日常のさまざまな動作にデュアルタスクトレーニングのヒントが隠れています。
歩きながら何かを考える、料理をする、必ず右手が勝つように一人ジャンケンをする……
些細なことでも十分に脳を活性化できるので、ぜひ積極的にリハビリプログラムへ取り入れていきましょう。

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