障害受容とは?人間が障害を受け入れるまでのプロセスを解説

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リハビリテーションの目的は、「失われてしまった患者さんの生活を取り戻す」ことです。
つまりセラピストが日々接している患者さんたちは、みな何らかの障害を持っている、ということになります。

人間は自身に障害を負ったとき、どのようにしてそれを受け入れていくのでしょうか。
今回の記事では、セラピストとしてぜひ覚えておきたい「障害受容」についてまとめています。

障害受容とは?

障害受容
障害受容とは、障害を持った人がさまざまな過程・段階を辿って、自身の障害を受け入れることを指します。

人は障害を負ったとき、「これまで簡単にできていたことができなくなる」という強烈なショックを受けます。
自分が認識している状態と、変わってしまった現実での身体との間に違和感を覚えるのです。
その違和感を正しく捉え、認識を現実に適応させていく……心理的な克服を果たすことが、障害受容のプロセスといえます。

そのため、障害を負ったことで自分の人生を悲観したり、将来を諦めたりすることは、障害受容ではありません。

障害受容の3つの側面

障害受容
障害受容は、身体的・心理的・社会的な三つの側面によって成り立ちます。

身体的受容
自分の身体について、症状や原因・予後を冷静かつ客観的に知る
心理的受容
自身の障害に対して、悩んだり恥ずかしがったり、ひどい情緒的混乱を起こさない
社会的受容
自分の家族や職業、住居などの関係により、即座に現実へ順応する

この3つの側面はそれぞれが密接に繋がっているため、個々に考えられるものではありません。
障害受容とはつまり、さまざまな側面から自身の価値観を変えていくことなのです。

人が障害を受け入れるまでのステージ

障害受容
人が障害を負ってからそれを受け入れるまでには、ショック期→否認期→混乱期→解決への努力期→受容期という段階を辿ることがわかっています。

ショック期

怪我・病気をして間もない、集中的な医療・ケアを受けている時期です。
感情が麻痺してしまっているため心理的には平穏な状態で、現実に起きていることを自分ごとに感じられなくなっています。
「治療を受けていれば完治する」と希望を持っているケースも多いようです。

否認期

身体的状態が安定したことにより、自身の怪我・病気が治らないらしいことを自覚する時期です。
自分の身体に障害があることは認められますが、それが今後の生活にどう影響するのか……までは考えが至らず、正確に受け入れることができません。
心理的な防衛反応として障害を否認したり、回復への希望を過剰に抱いたりします。

混乱期

自身の置かれている状況や自身の状態を現実的に理解する時期です。
障害の全貌を知り、自身の疾患が完治しないらしいことを否定できなくなります。
これにより、「自分の価値はすべて失われてしまった」と激しい喪失感を抱きます。

解決への努力期

いろいろな葛藤をしながら、少しずつ自身の状況を理解していく時期です。
他者に対して攻撃的になっても、結局問題は解決しない……と気付きます。
障害を受け入れることに対して、前向きな努力ができるようになる頃です。

受容期

自身の価値観が変わることで、自身の価値は障害によって損なわれない、とわかる時期です。
現状の自分自身を受け入れ、障害もまた自身の個性だと捉えられるようになります。
社会や家庭の中で新しい役割を得たり、他者との交流を経たりして、生きがいを感じられるようになります。

これらの段階を進んだり戻ったりしながら、少しずつ受容期に到達していきます。

ちなみに障害受容のプロセスについては、いくつかの理論が提唱されています。
日本では主にナンシー・コーン(ショック→回復への期待→悲哀→防衛→適応)とブルース・フィンク(ショック→防御的退行→承認→適応と変化)の段階理論が用いられていますが、いずれにせよ障害受容の過程については共通しています。

障害受容のために、セラピストができること

障害受容
障害を負った患者さんは、変わってしまった自分に対して「今までできていたことができなくなった」と深く傷ついています。
特にショック期~否認期の患者さんは抑うつ状態になりやすいため、セラピストは慎重に関わっていく必要があるのです。

ショック期~否認期:ありのままの患者さんの姿を受け入れる

まずは「どんな姿であっても、あなたはあなた」だと示してあげるのがよいでしょう。
声かけよりも、つらい気持ちをじっと傾聴することの方が効果的なこともあります。
関わり方の中で、ありのままの患者さんを受け入れる姿勢を見せていきましょう。

「リハビリすればよくなりますよ」「前よりもよくなりましたね!」
こうした励ましは、時として患者さんにプレッシャーを与えてしまうことがあります。
この言葉に、「今のあなたはダメ」というニュアンスを含まれてしまうからです。
セラピスト自身にそんなつもりはなくとも、落ち込んでいる患者さんはネガティブに捉えてしまうかもしれません。

混乱期:道を示してあげる

患者さんに「これからはこのような道筋で生活を取り戻していきます」と示すことで、安心感を与えることができます。

混乱期に入ると、ひとまず患者さんは自身に障害があることを理解できるようになります。
しかしこれからどうしたらいいのかわからず、「今後自分はどうなっていくのか」と強い不安に襲われてしまうのです。

セラピストは身体の動きを診るプロフェッショナル。
身体の状態や実施するリハビリプログラムによって、ある程度の予測を立てることができるはず。
ぜひその予測を患者さんに伝えて、希望を持ってもらえるようにしましょう。

解決への努力期:ともに悩み、努力する

患者さんが解決への努力期にある場合は、後悔を残さずに障害と向きあえるようにすることです。
後遺症が残ると予想される場合には、患者さんが「もっとリハビリを頑張っていたら……」「もっといい治療を受けていたら……」と後悔してしまわないよう、セラピストも一緒に悩む姿勢が必要です。

予後を断言しすぎてしまうのは、できるだけ避けた方がいいでしょう。
たとえば患者さんが「私、これから歩けるようになりますか?」と質問してきたとします。
このとき安易に肯定すると、期待通りに回復しなかった場合に患者さんを深く傷つけてしまう場合があるのです。
かといって「今後は車いすになります」と否定するのも、可能性を潰された気持ちにさせてしまうかもしれません。

状況にあわせて、「一緒に頑張っていきましょう」と寄り添うのがいいでしょう。

リハビリ・ケアの注意点

障害受容
障害受容の過程にある患者さんはとてもデリケートな存在です。
セラピストとしてリハビリ・ケアしていく際には、さまざまなことに気をつける必要があります。

必ずプロセス通りに行くとは限らない

人間の心は複雑です。必ずしもプロセス通りに、障害を受容できるわけではありません。
解決への努力期まで来ていた患者さんがひょんなことからショック期に戻ってしまったり、コーンやフィンクの理論とは違った反応をしたりすることもあります。
人生の最後まで障害受容ができないケースもあり得ますので、臨床現場では参考程度にとどめておくのがよいでしょう。

常に「何ができるか?」を家族にも考えてもらう

セラピストはもちろん、患者さんのご家族にも、つねに患者さんの様子を窺いながら「何かできることはないだろうか」と考えてもらえるように指導しましょう。

患者さんが次の段階に勧めるタイミングは誰にもわかりません。
その中でずっと観察して思いやってあげてください……というのは、決して簡単なことではないでしょう。
しかし、患者さんがチャレンジできるようになるためには、ご家族のサポートが欠かせないのです。

どうしたらいいのかわからなくて不安なのは、きっとご家族も同じ。
ぜひセラピストの視点から、ご家族にもアドバイスやケアのコツを伝えられるといいですね。

編集部より

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