訪問リハビリでのADL改善は、「無意識の力を習慣化する」コーチングがポイント

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株式会社メディケアソリューション代表取締役。2010年4月から約4年間、老健施設にて施設長を経験し、2014年8月に独立。理学療法士として地域リハビリに従事するかたわら、医療介護施設での研修・講演活動や、経営者・管理職のコーチングやコンサルティング、メールマガジン執筆YouTubeでの動画配信など幅広く活動している。著書「医療・福祉の現場で使える『コミュニケーション術』実践講座」(運動と医学の出版社) セミナーDVD「療法士のためのブレイクスルーコミュニケーション」も好評発売中。

鯨岡栄一郎

こんにちは!メディカルコーチの鯨岡です。
昨今の訪問リハビリにおいては、「活動」と「参加」を主眼においたアプローチが必要だ、ということがよく話題に上ります。
私が現場を見る中で感じるのは、利用者さんは「まさにそこで生きている」ということです。
当たり前のことですが、人はこれまでしていた生活行動以上のことはいきなり出来ません。
そこを外部の若造が入り込んでいって、生活の仕方を変える、QOL向上云々なんていうのは、ある種おこがましいのです。

生活の仕方はすぐには変わらない


ある利用者の旦那さんが80歳を超えてようやく退職され、家にいるようになりました。
その奥様は、今まで「家にいつもいない」ということにイライラされていました。
しかし今度は、いるならいるで、台所のことを何もしない!とイライラするようになってしまったのです。
でも聞くと、「お勝手をやってほしい」とちゃんと伝えたことはない。
奥様曰く「冷蔵庫に材料が入ってれば、普通気をきかしてやるでしょう」と。

奇妙な話ですよね。
旦那さんは今まで、何十年も台所仕事なんてしてなかったのに。
退職したからといって、いきなりやり出しますか?

それが人間の行動様式です。

習慣にないことを、いきなり始められますか?


ご自分のことに置き換えてみてください。
例えば読書の習慣がない人が、入院してリハビリを受けたとします。
退院する際に療法士から「読書なんてどうでしょうね?」という指導を受けて、実際に読書するようになるでしょうか?そうでは無いですよね。

運動の習慣のない人もしかり。
脳梗塞でリハビリを受けて、退院したからといって自主練を継続するか?しませんよ。
私が担当している利用者さんでも、「やった方がいいのは分かってるんだけどね~」が口癖で、ごく簡単な運動すらやって下さらない方がいます。

そんな時に私がよくやるのは、「これだけはやっててほしい」という最低限の運動を、いかに短時間で簡単にできるのかをお伝えすること。
実際にやらせてみて、「これやるの、ものの30秒ですよね?テレビ見ながらでもできそうですよね?」と。

利用者さんは、セラピストの想像を超えていく


利用者さんは、生活上せざるを得ないことは勝手にやるんです。
必要に迫られて「やるしかない」という時の強制力にはすごいものがあります。
よくあるセルフエクササイズ指導で庭を10メートル歩いてみましょう、この通りに体操してみましょう、立ち上がりの練習をしてみましょう……などということの、はるか上を行く行動をしてきたりするのです。
療法士の評価や予後予測なんかも、かるく凌駕してきます。

先日も、入院によってかなり体力が低下して、もうさすがに独居は難しいだろう……と感じていた方が、独居を再開させることができました。もはや執念ですよね。
この方がおっしゃるのは、「先生に言われた体操だけはちゃんとやってます」。
お独りなので、身の回りのことをやらざるをえない。こうなると、やはり改善は早い。
それはまさにコーチングと一緒で、本人自身がこうなりたい!こうなるのは絶対にヤダ!という主体性がすべてであるということです。
やらされている……という意識では、決して変わることは出来ないのです。

歩けないと言いながら、おしゃれして出かける利用者さん


他にも、
「両脇を抱えられてスーパーに行ってきました」
「のこぎりで庭木の剪定をし、ゴミ出しまでしてきました」
ふらつきがかなり顕著なのに、「孫に新鮮な魚を食べさせたくて、近所の魚屋まで行って帰ってきました」
といった、「えーっ!」「よくそこまでやりましたね」というケースがたくさんあります。

ある不全片麻痺の方。元々麻痺は軽く、在宅内で悪くない動きをされていましたが、「この足じゃ外なんて歩けない」と言い張っていました。
しかし、昔から好きだったカラオケに行きたい一心でリハビリに取り組み、状態は大きく改善しました。
当初は多少ふらつきがあって、T杖歩行で近所を散歩する程度で設定していたのに。
ある日リハビリが終わって、他の方を回ってからまたこの方の家の近辺を走っていましたら、よそ行きの格好で杖もつかず郵便局に行く利用者さんの姿を目にしたのです。
もう見た目はいたって普通のおばちゃん(笑)
これには思わず「歩けたんかい!」と突っ込み(笑)、愕然としてしまいました。

無意識の力を習慣化するコーチング


やってみたら思いのほかできた・気づいたらやっていた、という形の行動変容。
これは私がそうしたのではなく、利用者ご自身の力でそうされたのです。
リスクの面から決して推奨はできないものの、これがADLのブレイクスルーのきっかけになることは多々あります。
特に訪問のシーンで療法士が「活動」と「参加」にアプローチしていくのであれば、クライエントの生き方という非常に大きなくくりを捉える枠と柔軟性が必要。
枠がせまければ、クライエントの生き方の幅を拡げるなんてことは出来やしません。

いかに安全面にも配慮しながら、思わずやっていた→出来たから自信につながった→それが習慣化されていた……という流れを引き出すコーチングができるか。
それが、地域包括ケアシステムの中で、療法士としての存在感を示すことに繋がるのではないでしょうか。

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