脳卒中患者の姿勢障害「プッシャー症候群」のリハビリ方法

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脳卒中患者が年々増加している昨今、臨床現場では片麻痺や高次脳機能障害を抱えた患者さんと対面する機会が多くあります。
その中で、患者さんの身体が変に傾いてしまっているのを見たことはありませんか?

それは「プッシャー症候群」によるもの。
脳卒中の急性期をはじめ、加齢による脳萎縮やアルツハイマー型認知症など、脳に大きな影響が及んだ際に発現する症状です。

今回はこのプッシャー症候群について、どのような特徴があるのか?アプローチ方法は何か?について考えてまいります。

プッシャー症候群とは

プッシャー症候群
プッシャー症候群とは、脳に障害を受けた患者さんの身体が、麻痺側に傾いてしまう姿勢定位障害のことです。
プッシャー現象、押す人症候群、体軸傾斜症候群などとも呼ばれています。
セラピストが身体の位置を正そうとしても、床や座面を手足で押して抵抗する様子が見られます。

身体が傾いてしまうメカニズムは、以下のように考えられています。

  • 1.片麻痺の状態で両足に均等に体重を乗せようとする
  • 2.しかし麻痺側は感覚が低下している
  • 3.そのため、より強く感覚入力しようとする
  • 4.麻痺側に荷重が偏り、身体が傾斜する!

しかし患者さんはその状態で正中だと認識しているため、セラピストから修正を受けると、非麻痺側に体勢を崩されたと判断して押し返してしまうというわけです。

運動維持困難や病態失認、認知症など脳の全般的な障害と関連して、頭頂葉の障害によって視覚・迷路・固有感覚の統合がうまくいかず、身体の位置関係の修正が難しくなっていると考えられます。

体軸がずれている、体軸失行であると言われることもありますが、脳のどの領域を障害されたことによって起こるものかは分かっておらず、発現のメカニズムもまだ未明の点が多いようです。
現在では「脳卒中によって固有感覚情報や迷路情報・視覚情報の統合が崩れてしまい、身体の位置関係を修正できなくなってしまったもの」と考えられています。

プッシャー症候群の主な特徴

プッシャー症候群
プッシャー症候群の主な特徴には、以下のものが挙げられます。

  • ・左側の片麻痺がある場合に多い
    (プッシャー症候群の責任病巣が、右半球の頭頂葉であると推測されているため)
  • ・半側空間無視を伴う
  • ・立位では麻痺側に重心が偏るため、健側が短縮し麻痺側の伸張が起こる
  • また、歩行時に健側への体重移動が困難になる

  • ・平行棒を適正な高さにすると不安定になる

どのようなリハビリをすべき?

プッシャー症候群
プッシャー症候群のある患者さんに、身体の傾きを言語的に説明してもあまり理解されません。
また無理やり左右の均衡を取らせようとすると、危険を回避しようとしてより強く症状が出てしまうことがあります。

視覚による垂直判断は保たれていることが多いので、患者さんには実際に自分の姿勢を見てもらって、「姿勢の垂直判断」と「実際に見た姿勢」が異なっていると理解してもらうことが推奨されています。

以上のことから、このようなリハビリを行っていくとよいでしょう。

  • 1.鏡で姿勢を認知してもらう
  • 2.健側の上肢を前方の台に乗せる
  • 3.点滴棒など、指標となる垂直なものに身体をあわせる
  • 4.歩行時に杖を使う場合は、少し前に出すよう指導する
  • 5.平行棒を通常より高く設定する。
    保持が困難な際には後方から抱えるように、上肢の支持をなくした位置でコントロールする

とはいえ実際の臨床では、プッシャー症候群の症状に麻痺や痛み・運動失行や失認などの高次脳機能障害の問題も加わります。
そのためにリハビリアプローチが困難になることは、想像に難くありません。

評価方法「SCP」とは

プッシャー症候群
SCPはScale for Contraversive Pushingの略で、プッシャー症候群に対する評価方法です。
患者さんの垂直性、非麻痺側上下肢の外転・伸展(押す現象)、抵抗の3項目を立位と座位で評価します。
押す現象がない場合は0、最重症の場合は6として判定していきます。

1.姿勢(麻痺側への傾斜)

傾きがひどく、転倒してしまう:1
転倒はしないが大きく傾いている:0.75
軽く傾いている:0.25
傾いていない:0

2.外転と伸展(押す現象の有無)

姿勢を保持している状態で押してしまう:1
動作に伴って押してしまう:0.5
押す現象はない:0

3.修正への抵抗

正しい位置へ修正すると抵抗する:1
抵抗しない:0

以上3項目がそれぞれ≧1となる場合、プッシャー症候群が発現していると判定します。
プッシャー症候群の症状の有無や重症度を判定することで、予後予測や介入プログラム立案に活用できるのです。

プッシャー症候群の予後

プッシャー症候群
プッシャー症候群は、時間の経過とともになくなっていくことが多いようです。
ただし症状が出た患者さんの方が、出ていない患者さんよりも入院期間は長くなるとされています。
また、左半球を損傷した患者さんと比較すると、右半球を損傷した患者さんの方が回復の遅延が見られる傾向があります。

まとめ

プッシャー症候群は急性期納所中患者の中でも、広い領域を障害された患者さんに発現することが多いようです。
その中には、高次脳機能障害を合併しているケースもあります。
病態失認や失行、そのほかの要素も複雑に絡み合ってくるため、判断が非常に難しいものであると意識しておきましょう。
どのような障害がともに現れているかによって、おのずとアプローチ方法も変わってくるはずです。

意識障害を併発している場合は、リハビリ介入が思うように進まないことも珍しくありません。
予後が順調であっても、プッシャー症候群が見られる急性期から身体機能を向上させるための介入が出来ないのは問題です。
さまざまなアプローチ方法を考えながら、患者さんをサポートしていきましょう!

編集部より

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