排泄ケアからリハビリの意味を知った療法士の話

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むとうドットコム 代表、光プロジェクト株式会社 取締役。社会人経験後、作業療法士となり臨床経験5年目で老健副施設長に就任。自ら設計したひのき個浴で生活リハビリを推進、当時2割を占めた機械浴利用者をゼロにするなど、職員と力を合わせ施設の業務改善に尽力する。その後施設は地域でも一目置かれる存在に。現在は独立し、介護施設専門の業務改善アドバイザーやパソコンの修理販売の事業をするかたわら、ショッピングリハビリ®で全国展開をする企業の運営をし、多方面に活動を広げている。

武藤竜也

「見て見て!さっき、ハルミさんがすごく大きなウンチをしたの!」

デジカメを手にした理学療法士の女性が、トイレから介護ステーションへ興奮気味に駆け込んできました。そして撮った写真を、介護スタッフ達に見せて回ります。

写っていたのはあるご利用者が先ほどしたばかりの、便器の中に居座った大きなウンチ。流す前に記念に撮ったものでした。
私はそこに居合わせなかったのですが、見せられたスタッフ達は一緒に喜んだり、驚いて目を背けたりと、きっとさまざまな反応をしたことでしょう。

ハルミさん(仮名)は重度の片麻痺で、ベッドからの起き上がりも、車椅子への移乗も一人では出来ません。もちろん、立つことも出来ません。他人のお世話がなければ、寝たきりの生活を余儀なくされてしまう方です。
ご自身で動けない分、スタッフへの介助要求も多めでした。排泄は当然のように紙オムツを付けています。
きっと皆さんのご利用者にも、いらっしゃるようなケースかと思います。

オムツ排泄が、利用者の便秘に拍車をかける!?

こうしたご利用者は便秘であることがよくあります。

運動機能が弱り、排泄に必要な踏ん張る力が低下してしまうため。
副交感神経の乱れによる腸活動の低下のため。
食事や水分摂取量が不十分による便形成の不全のため。
片麻痺の不自由な生活に対するストレスのため
など……

さまざまな理由が考えられます。

さらに便秘が続くと下剤の使用や摘便などの医療的処置を実施することになりますが、上述のような便秘原因の改善には至らず、逆に医療的処置への依存度が高まってしまう場合も考えられます。
やはりハルミさんも便秘で、時おり下剤や摘便を必要とする方でした。
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虚弱な高齢者が自力排泄するための生活支援の大切なポイントとして、

・排泄時に足がしっかり地面につき、踏ん張りやすくすること
・重力と、腹圧をかけやすい前かがみ姿勢を利用して排泄を促すこと
・誰にも邪魔されない落ち着いた環境をつくること

などがあります。

でもこれは、寝たきりの人がオムツをしたまま出来る排泄ではありません。
私たちが普段トイレで行っている「当たり前の排泄行為」なのです。

私たちは、起き上がれない・立てないからと、ご利用者にオムツ排泄を当然のように押し付けてしまう場合があります。
しかし実はオムツ排泄という行為自体が、便秘の理由になるということも考えておかなければなりません。

高齢者だからこそ、「当たり前のトイレ排泄」をサポートすべし

皆さんは、寝たままでオムツ排泄を体験されたことはありますでしょうか。
私は体験したことがありますが、きっと初めての方は尿も便もオムツ内には出来ないでしょう。

まず「排泄する場所ではない」と無意識に身体に抑制がかかります。
私はベッドの上で頑張っても無理だったので、トイレで座って力んで頑張りました……がやはり無理でした。
排泄したいのに出来ないという不思議な体験です。
諦めてベッド上に戻り、自分の身体の力がふっと抜けた時に「チョロチョロ……」と尿が出てきたことを覚えております。

そしてすぐ、不安な気持ちが襲ってきます。
ベッドは汚れていないだろうか。陰部やお尻は汚れて大丈夫だろうか。汚れたオムツの付けっぱなしは気持ち悪く不快だ。
そして何より、トイレで排泄していない屈辱的な気持ちが忘れられません。

このような体験を一度でもすると、ご利用者の気持ちがよく分かると思います。
もし私が利用者だったらオムツ内の排泄を極力我慢して、トイレ誘導してもらうまで待つようになると思いました。
結果、排泄リズムが崩れて便秘になる可能性が高まります。人によっては不快・不安な気持ちから、不穏な状態になるかもしれません。
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さらに寝ながらの排泄は、重力や前かがみの排泄姿勢が全く活かせません。体幹の筋力だけで腹圧をかけて排泄することになりますから、虚弱な高齢者には大変負担のかかる排泄行為となります。
つまり高齢者こそ、人として当たり前のトイレ排泄行為が便秘予防のためにも必要になってくるのです。

出来ないと思っていたトイレ排泄が、技術を習得すれば出来る介助になった!

私はその理学療法士の女性に、重度の片麻痺で寝たきりの方でも無理なくトイレに移乗出来るトランスファーの技術を伝えました。
彼女はそのトランスファーを何度も練習して習得し、便秘で困っていたハルミさんを無事トイレに座らせることが出来ました。

「せーの、踏ん張れー!!」

ハルミさんをトイレで前かがみにし、いっしょにトイレで力んで頑張りました。そしてその立派なウンチと巡りあうことが出来たのです。

実はこの施設スタッフの誰もが、ハルミさんのトイレ排泄は出来ないと思っておりました。トイレにお連れすることも考えつかなかったかもしれません。
便秘の原因はハルミさんご自身ではなく、オムツ排泄を当然と考えていた介護環境にあった可能性も考えられます。

このハルミさんの衝撃的なウンチ事件から、介護スタッフ達は他のご利用者もトイレで排泄が出来るかもしれないと気づき、その理学療法士と共にトイレ排泄に取り組み始めております。

機能訓練や徒手的治療だけが、療法士の仕事ではない

今回のお話は、私がアドバイスさせていただいている介護施設での出来事です。後に、その理学療法士にこう打ち明けられました。

「今まで私は、機能訓練や徒手的治療を通して身体障害を改善することが療法士の仕事だとばかり思っていました。毎日同じ仕事で、面白さを感じないときもありました。
私のリハビリで身体が良くなったとしても、他職種との連携が上手くいかず日常生活に活かせてない歯痒さを感じたこともありました。
でも今、ご利用者の生活支援の別な方法を知り、私が生活に関わることでご利用者がみるみる元気になっていくという事実を目の当たりにしました。
他職種の仕事にも理解が深まり、連携する楽しさが分かりましたし、私がこの職場でこれからやるべき仕事も見えてきたのです。教えてくれた武藤さんに感謝してます」
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大変ありがたい言葉を頂戴して、私の方も感謝の気持ちでいっぱいです。

しかし、私が彼女に対して特別なことをしたわけではありません。治療テクニックとは違う別の支援技術(トランスファー技術)と、人として当たり前の排泄をすることの大切さをお伝えしただけです。
そしてその技術をフル活用し、今まで定位置だった治療台を離れてオムツのハルミさんをトイレにお連れするという積極的な行動によって、職場の排泄ケアに変化を与えました。
さらに他職種との連携を改善し、自分の今後の在り方も見出してしまった彼女には「スゴイ!」の一言しかありません。
これからもご利用者やスタッフの皆さんのために、ますます頑張って欲しいと願っております。

編集部より

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