効果は?やり方は?エビデンスは?「ミラーセラピー」がまるっと分かる!

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姿勢や動き、身だしなみ……それらをチェックするために、多くの人が日常の中で「鏡」を使っています。
誰もが当たり前に使う必需品であるこの鏡、実は医療現場においても、リハビリ療法として利用することが出来るのです。
今回は、「ミラーセラピー」についてまとめました。

ミラーセラピーとは?

ミラーセラピーとはその名の通り鏡を用いたリハビリ療法です。
腕を切断した人の幻肢痛(ないはずの腕を痛がること)への対応として、カリフォルニア大学のラマチャンドラン博士が開発しました。
現在では脳卒中や脳血管障害によって片麻痺になった患者への治療にも用いられています。
鏡に映った非麻痺側の部位の動作を患者自身がよく観察し、麻痺した部位を同じように動かそうとする治療法です。

どのような効果がある?

鏡越しに麻痺していない部位の動きを観察し、麻痺した部位が動いていると錯覚させると、その情報が送られて脳の活動が活発化します。
学習的な麻痺を書き換えることで、治療部位の機能改善を図ることが出来る……とされているのです。
ミラーセラピーの仕組み

私たちは身体が動いていることを、感覚や視覚などの情報から頭で確認しています。
生まれた時からの繰り返しにより、「動く」ということを脳が覚え、一般化するのです。
しかし一度麻痺してしまうと、感覚・視覚からの「動いている情報」の確認ができなくなってしまいます。
動くと思って見ても動かない、触った感覚があると思ってもない。
麻痺が起こると、「動かない」という情報が常に頭の中でフィードバックされてしまいます。
そうすると、動かない状態が当たり前――一般化されてしまうのです。

つまりミラーセラピーによってもう一度「動く」というフィードバックを与えれば、脳は再び動くことを一般化しようとして、部位の機能を改善しようと働くわけです。
ミラーセラピーによって、運動機能の回復・操作性や筋力の機能改善を期待できます。

ミラーセラピーのエビデンス

ミラーセラピーの詳細は、まだまだ解明されていません。
「本当に脳が騙されているのか」「脳の中でどのような作用を及ぼしているのか」「副作用はあるのか」など、はっきりしていないことの方が多いようです。
個人差や環境の影響が大きく、科学的根拠を作りにくいリハビリテーションのため、まだまだ経験に基づいて行われています。
施設間でその方法やゴール設定に差があるのが現状です。

ちなみに理学療法士協会が発表している「推奨グレードの決定およびエビデンスレベルの分類」によると、

亜急性期脳卒中患者に対してミラーセラピーを行った群では、6 か月後に運動機能回復と運動機能が対照群よりも有意に高かった。痙縮や歩行能力には有意な差はなかった。
亜急性期脳卒中患者に対してミラーセラピーを行った群では、治療後 4 週間後および 6 か月後において手および上肢の運動機能回復と手関連機能が対照群よりも有意に高かった。
発症後 6 か月の患者に対し、ミラーセラピーを実施した結果、操作性や筋力という機能面において改善が見られた。

といった報告もあるようです。

ミラーセラピーのやり方

ミラーセラピーを行うにあたって必要なのは、歪みのない普通の鏡だけです。
治療部位によって鏡の大きさは異なりますが、身体の正面に設置できること・部位がすべて映ることが条件になります。
軽量で割れにくいものを選ぶとよいでしょう。
療法士によっては鏡にお手製のスタンドをつけたり、段ボール箱を改造して患部を入れられるようにしたミラーボックスを作ったりします。
ミラーボックスの作り方は、こちらのページが参考になります→【府中病院 ミラーセラピー

鏡が準備できたら、以下の流れで治療を行っていきます。

  • 1.鏡を患者の身体の正面に置き、治療部位と逆側の部位が映るようにする
  • 2.映る鏡像を患者に覗きこんでもらう
  • 3.健常な部位を動かしてもらう
  • ※時間は10~30分ほど

ミラーセラピーのやり方

動かし方に決まりはありません。目で確認しやすいように、ゆっくりとした動きが望ましいです。
たとえば手の治療であれば、

  • ・手の開閉(グー / パー)の繰り返し
  • ・指折り(親指から順に曲げていき、小指から順に伸ばす)
  • ・手のひらを伏せたり返したりする

などが挙げられます。

基本的には見ているだけで十分脳を刺激できます。
鏡の裏に置いた患部を実際に一緒に動かしてみるかどうかは、患者に合わせて療法士が判断します。

こんな症状にも応用できる!

主に手や腕の麻痺を改善させるために利用されるミラーセラピーですが、部位をまるまる映せるだけの鏡があれば、さまざまな症状に治療効果をもたらすことができます。
参考:三上クリニカルラボ ミラーセラピーとは?

四十肩、五十肩

正式名称は「肩関節周囲炎」という疾患群で、肩関節の周囲に起こる炎症を指します。
腕を上げ下げすると肩に痛みが起こり、思うように動かせなくなります。
多くの中高年が悩んでいる四十肩・五十肩も、ミラーセラピーによって改善できるのです。
鏡に映っている健常な腕を上げ下げすることで、炎症を患っている方の腕も上げ下げできている錯覚が起きます。
その後で痛めている方を動かしてみると、脳が活性化されたことで腕が上がるようになります。

CRPS(複合性局所疼痛症候群)

末梢神経や中枢神経が傷つくことで、外傷などが治ったにもかかわらず痛みを感じるようになる神経系の疾患です。
CRPSの回復期リハビリテーションでも、ミラーセラピーを利用して筋力増強運動をすることが出来ます。
たとえば足の指に力が入らない、という症状があった場合。健常な足の指で療法士の指を掴む練習をして、力強い動きを鏡越しに見ます。
すると視覚・触覚・運動覚の複合フィードバックによって脳が刺激され、患部側の足に筋力上昇が起こります。
通常の筋肉トレーニングより即効性があり、かつ効果的です。

変形性股関節症

先天性・後天性の病気や外傷によって、関節の構造が破綻した状態をいいます。
関節軟骨に変性・破綻が起こり、それを修復する反応が同時に起きている状態……つまりすり合わせに不具合が生じて、関節が変形していく非炎症性で進行性の病気です。
変形性股関節症によって筋力が衰えてしまっても、ミラーセラピーによって回復することが出来ます。
CRPSのケースと同様に、自身の運動を鏡越しに見ることで脳が活性化され、筋出力が上昇します。

etc……

治療を行う上での注意点

ミラーセラピーに限ったことではありませんが、治療の効果には個人差があります。
鏡像に対して錯覚していると自覚できる人もいれば、錯覚できないと訴える人もいます。
ミラーセラピー
ミラーセラピーの難しいところは、患者が実際に頭でイメージできているか可視化できない、かつ客観的に測定できない部分にあります。
治療がどれだけ進んでいるかは、患者の主観が頼りになるのです。
また急性期に実施する場合は、意識レベルや注意機能によっても進み具合が左右されます。覚醒レベルや注意機能の評価は必要です。

それから、鏡の裏で実際の患部を動かす際には、細心の注意を払いましょう。
集中できる環境をつくり、不快感・痛みを与えないことが大切です。

これまで幻肢痛や片麻痺に対するリハビリテーションは、利き手を交換するなど、残った機能を失った部分への代償にすることが中心でした。
それは一度なくした機能が、元に戻らないことを前提としていたからです。

しかし中枢神経の変化や神経ネットワークの再構築によって回復を見込めることが、動物実験や実際の現場での結果で明らかになってきました。
「脳へのアプローチ」に着目した治療法は、これまでにない新しい医療技術だと言えます。
脳障害に対するリハビリテーションは、新たな時代を迎えようとしているのです。

メカニズムが解明されて、より多くの応用が出来るようになることが期待されますね。

編集部より

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