「できない」という思いこみから、患者さんを解放しよう

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株式会社メディケアソリューション代表取締役。2010年4月から約4年間、老健施設にて施設長を経験し、2014年8月に独立。理学療法士として地域リハビリに従事するかたわら、医療介護施設での研修・講演活動や、経営者・管理職のコーチングやコンサルティング、メールマガジン執筆YouTubeでの動画配信など幅広く活動している。著書「医療・福祉の現場で使える『コミュニケーション術』実践講座」(運動と医学の出版社) セミナーDVD「療法士のためのブレイクスルーコミュニケーション」も好評発売中。

鯨岡栄一郎

私たちがリハ専門職として、特に訪問の現場で利用者さんに携わる時、当然それぞれのADLレベルがあります。それを決定づけているものは何なのでしょうか?
身体機能?痛みの有無?認知症のレベル?意欲?家屋環境?……当然、これら様々な要素が絡み合っていることでしょう。
しかし私はコーチ的視点から、実は「自己イメージ」そして「思い込み」が少なくない割合で影響していると感じています。

人は「思いこみ」の中で生きている!?

私はコーチとして多くの方たちと関わらせて頂く中で、人は普段の生活の中で、とても大きく「思いこみ」にとらわれて影響を受けていると感じています。
それは年齢や障害のあるなしに関わらずです。人は、自分で思い込んだ世界観の中で生きているのです。
「事実は一つ、解釈は無数」という言葉がありますが、これは本当です。
自分のもつ能力がどの程度のものなのか?どこまで出来るのか?それは全て解釈であり、思いこみなのです。

できるかできないか、決めるのは自分なのに……

人の土台がこれですから、仮に何らかの疾患により今まで通りの動きが出来なくなった場合、一気に身体に対する認識が下がってしまうことは想像に難くありません。
自己イメージも低下し、自信まで失ってしまうことでしょう。
また痛みが出るのではないか。転ぶのではないか。……そうした不安から、行動を制限してしまうことも当然ありえます。
例えば、ある方は寝返り動作をさせると「こんな動きできっこない、やったことがない」とおっしゃいますし、またある方は「全然歩けなくなった」とおっしゃいます。
いずれも、やれば出来るのにも関わらず。

これは私たちにもよく見られる現象ではないでしょうか?
「フルマラソンなんてできっこない」
「人前で発表なんてとてもとても……」
「初対面の人とか苦手なんです……」
つまり「できない」と思うのも自分、「できる」と思うのも自分ということです。
これは全て自己イメージによる思いこみであり、決して事実ではないのです。

また厄介なのが、主介護者である配偶者・ご家族が要介護者ご本人の能力を低く見積もっている場合や、過保護になっている場合です。
普段からそのように接するわけですから、ご本人の能力は発揮されずじまいになってしまいます。

患者を信じるリハビリテーション

そこで、療法士からの客観的な視点はご本人に大変効きます。
専門的な視点から「ここまでは確実にできている」「今後はこの辺まで出来そうだ」というのが見えるからです。
これを確実にフィードバックして、「できている」ということをきちんと認識して頂くのです。

この積み重ねによって自己効力感が高まり、自信につながっていきます。当然、体力も高まり、動作にも慣れ、上手になり、ADLも上定着していきます。
もちろん身体・認知レベルによっては、到底無理なことをさせるわけにはいきません。しかし「本当はここまで出来るのにもったいない」ということはあちこちの場面で散見されるのです。いわば“能力の持ち腐れ”です。

またもう一つの見方として、できていない自分でいることはある意味都合がいいこともあるというものがあります。
それは「自分でやらなくていいから楽」「甘えられる」「自分のことを注目してもらえる」「重要に扱ってもらえる」などのニーズを満たすことが出来るからです。
これはご本人にはなかなか認めづらいことかもしれませんが、潜在的にはこのようなニーズがあると見て良いでしょう。

逆に言うとどんなにリハビリ上で狭義の身体機能を改善させようとも、痛みを取り除こうとも、肝心のその方自身の自己イメージを変えない限り生活上の動きは変わってこない!ということです。
だからこそその思い込みから解いてあげる必要があるし、何よりわれわれセラピストも狭い枠内の思い込みから抜け出る必要があると思うのです。

相手を信じ、「あなたはここまでは絶対にできる、できている!」という明確で肯定的な言葉かけをすること。これは非常にコーチ的です。

表面上のコミュニケーションスキルではなく、リハビリテーションにコーチングを生かすことが、もっとも大事になってくるのではないでしょうか。

動画はこちら。

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