利用者を蔑ろにしてまで生き残ろうとする療法士へ。忘れないで欲しい。あなたの仕事の目的は、困った人のお役に立つことなのです。

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むとうドットコム 代表、光プロジェクト株式会社 取締役。社会人経験後、作業療法士となり臨床経験5年目で老健副施設長に就任。自ら設計したひのき個浴で生活リハビリを推進、当時2割を占めた機械浴利用者をゼロにするなど、職員と力を合わせ施設の業務改善に尽力する。その後施設は地域でも一目置かれる存在に。現在は独立し、介護施設専門の業務改善アドバイザーやパソコンの修理販売の事業をするかたわら、ショッピングリハビリ®で全国展開をする企業の運営をし、多方面に活動を広げている。

武藤竜也

私が老健の副施設長をしていた頃、施設内で尊敬していた人がおりました。

その方は、いつもニコニコ笑顔で誰にでも「おはようございます!」「お疲れ様です!」と仕事の手を止めて元気な挨拶をしておりました。

顔には汗を滲ませて、黙々と一生懸命に自分の仕事をこなし絶対に手を抜かない。
「これ全てやってから帰らないとね、中途半端には出来ないのよ」なんて言いながら仕事をされている姿に、私は仕事に対する責任感や前向きさ、プロとしての自信など、改めて学ぶことが多くありました。

その尊敬する方とは、掃除係のOさん。週に1〜2回掃除の当番が回ってくると施設に来てくださります。

Oさんとはよく廊下でこんな話をしておりました。
「武藤さん、今度はあの場所を直したんでしょ?様変わりにビックリしちゃったわ。この施設はいつも来る度に何かしら変わってるからね、武藤さんが変えて良くなるのが分かるから本当に掃除に来るのが楽しみなのよ。これからも頑張ってくださいね!」

私はOさんの仕事に対する真剣な姿勢から、たくさんのことを学ばせていただきました。
また、私の仕事を心からの笑顔で褒めてくださりました。相手に学びや気付きを与え、きちんと相手の成果を褒めるというOさんの素晴らしい仕事。本当に素晴らしいです。

「人に認められるため」に仕事をしたっていいじゃないですか

それに対して、当時の私が施設管理職として職員に同じような役目を果たせていたのか今考えると、当時の私の力はOさんと比べれば到底及ばなかったなと反省するばかりです。

当時、私は地元でも「ケアの質が悪い」と評判の老健に副施設長として就任し、業務改革に取り組んでおりました。(その老健は、地域では個浴で名の知れた施設となり、利用者さんや業界関係者から評判を得るまでになりましたよ)

私が副施設長になる前は現場の作業療法士でしたから、組織を変えるノウハウなんて何一つ持っておりません。また、私は「ケアの質が悪い」と評判の老健を変えるべく、半ば強引に業務改革を強行した部分もあったので、当然私に反発する職員もおりましたし、逆にその強引さを応援してくれる職員も僅かにおりました。

私はそんな尖った人間ですから、何かを改善したところで褒めてくれる職員なんて殆どおりませんでした。
「また武藤が何かやってるよ……」そのくらいのものです。

でも、Oさんはしっかり私の仕事を見て心から感激してくださっていました。しかも私はそれを非常に心地良いと感じておりました。
こうなると私は、Oさんに褒めていただくことも密かに期待して施設改革を頑張るようになっちゃうんですね。
人は年齢や性別、立場など関係なく、誰かに承認されたい生き物なのです。そして、誰かの役に立ちたいと思う生き物なのです。

あなたが療法士になりたいと思った理由を覚えていますか?

現場で働く療法士の皆さんはいかがでしょうか。
困っている患者・利用者さんのお役に立ちたくて療法士を志し、頑張って勉強して手に入れた国家資格。
しかし、ネット上では療法士数の過剰問題で不安や危機感を感じるような記事を見かけます。今後生き残るためにはどうするか、といったことがSNSやブログでも時折話題になっております。

私も過去に似たような記事にさせていただきましたが、これは近い将来の事実として受け入れなければならないことだと思います。

でも、その療法士業界で生き残るために自分の働き方ばかりを考えることは正しいことでしょうか
困っている人たちを蔑ろに、自分たちの生き残る方法だけを模索する。そして考えるうちに自分が何をしたらよいのか分からなくってしまう。
もしそんな考え方に陥ってしまったら、絶対に仕事の楽しさを感じることは出来ませんし、そのような療法士はきっと生き残れないと思います。
あなたが療法士になりたいと思った純粋な貢献に満ちた初心を忘れないでほしい。

身近な困っている人を助けることが、世の中になくてはならない療法士になること

あなたを必要としている人は、患者・利用者さんだけでなく、もっと広く世の中に存在しています。困っている人を職場の病院や施設からいつものように紹介してもらうのではなく、ぜひ自分で外で見つけてみてください。

これからはそんな視点が重要になってくるのではないでしょうか。それはもしかしたら、近所の小学生たちかもしれませんし、工事現場で働く作業員、またはタクシー運転手かもしれません。はたまた人ではなく交差点の信号機や横断歩道といったインフラかもしれません。

療法士の視点で見たときに、「こうすればラクなのに!」とか「こんな道具があれば良くなるはず!」といったアイデアが求められているのです。それがあなたの新しい貢献の始まりになるでしょう。

自分の業界の常識は、他業界では常識でないことは多々あります。実は街の中は「困っている」で溢れております。そんな考え方をもって、ちょっと外を歩いてみてはいかがでしょうか。そして、街で頑張ってお仕事されている方々に「お仕事お疲れ様です!いつもありがとう!」と勇気を出して声をかけてみましょう。それをきっかけに何かお役に立てる仕事をお願いされるかもしれませんよ。

あなたの仕事の目的は、困っている人のお役にたつこと。その原則は変わらないのです。

その原則に従って困っている人のために即行動出来る人が、世の中になくてはならない人となり生き残れるのだと思います。

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