【特集】音楽には、患者もご家族もケアできる強みがある 音楽療法士・佐藤由美子さんインタビュー 2/3

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前回の記事では、団塊世代への音楽療法や、自分にあった音楽の探し方などについて、米国認定音楽療法士の佐藤由美子さんにお話を伺いました。

■第1回「【特集】悲しいときには悲しい音楽を聴くといい?音楽療法士・佐藤由美子さんインタビュー 1/3

今回は、医療費削減や地域包括ケアシステムによる「在宅」へのシフトの影響、認知症患者へのケアなどについて伺った内容をご紹介します。

satoyumikosama

ラスト・ソング (一般書)

在宅ケアの難しい点

—— 地域包括ケアシステムによる在宅へのシフトが進んでいます。国内では医療費削減のため、脱病院・脱施設の流れが強まり、医療・介護の現場は「在宅」へとシフトしています。音楽療法の在宅ケアならではの難しい点などはありますか?

佐藤由美子(以下、佐藤):在宅での音楽療法の難しい点は、在宅医の先生方が直面している問題と同じです。

昨年から、横須賀で在宅医療をしているお医者さんと一緒に患者さんを訪問しており、その経験を通じて感じることは、「今後在宅ケアを必要とする人たちが増えてくるであろう」ということと、「在宅ケアを行うスタッフの必要性」です。

病棟や老人ホームで患者さんを看る場合、一度にたくさんの患者さんを看ることができますが、自宅を訪問するとなると、かなりの時間を要します。患者さんの自宅を訪問して行うケアは一番時間がかかりますので、人手が足りなくなります。

また、在宅ケアはご家族に負担がかかりますので、患者さんだけでなく、ご家族の心のケアも大切です。音楽療法士の特徴として、患者さんだけでなくご家族にも心のケアを提供し、最期の時間をよりよく過ごすお手伝いをすることができます。

『ラスト・ソング 人生の最期に聴く音楽』(ポプラ社)が発売されてから、在宅での音楽療法の必要性に気づいている医療福祉関係者の方からたくさんのメッセージをいただきました。

どのような形で音楽療法を取り入れるべきなのか、皆さん模索中なのだと思います。どこから経費を出せばいいのか、どのようにすれば能力のある音楽療法士を探すことができるのか、などと言った質問をよく受けます。

音楽療法士がどのような形で在宅医療に取り入れられるべきなのか、今それを真剣に考える時期なのだと思います。

「認知症」で疲れてしまった家族の絆を再生する

—— 国内では認知症の問題に視線が集まっています。認知症による問題は徘徊や不潔行為などによって、ご家族が心身ともに疲れてしまうケースもあります。このような認知症患者へは、音楽療法でどのようにアプローチをすればよいのでしょうか?

佐藤:認知症を患っている方の場合、「音楽療法のある時間は良いけど、それ以外の時間は不穏になったり暴れたりする」ということをよく聞きます。

それは認知症という病気を考えれば、当たり前のことです。だからこそ常勤で音楽療法士が勤める必要があるのです。
施設でのケアの場合、認知症を患っている方が不穏になった時に、即座に介入できる態勢にしていくため、理想的なのは音楽療法士を常勤で雇うことです。

また、患者さんを自宅でケアしている場合は、ご家族の心身のケアも大切です。音楽療法によって、認知症の患者さんとご家族が有意義な時間をすごすお手伝いをすることもできます。

実際にどのように患者さんとご家族との音楽療法をするのか、こちらの動画を見ていただければと思います。

右に映るのは95歳のアルツハイマー病の患者さんです。普段は目を閉じてうつむき、車椅子やベッドの上でじっとしているだけでした。発する言葉も意味をなさないものばかりで、コミュニケーションは難しい状態でした。

左に映るのはその娘さん。衰えゆく父親の姿を見ることに、日々つらい思いをしていました。患者さんは元ピアニストで、娘さんも父親からの影響で音楽の道に進んだ、アイリッシュハーピストでした。

音楽を通じて二人の絆を取り戻せるのではないかと思い、娘さんも一緒に音楽療法をしたのです。患者さんは音楽療法の間だけは、「すごくいいね」というような感想を口にしたり、ときには娘の名前を呼ぶこともありました。

二人は音楽を通じて残された時間を有意義に過ごしました。それと同時に、娘さんと一緒にセッションをすることで、私は彼女に心のケアを提供することもできたのです。

音楽療法を行うには、トレーニングが必要です。

—— 世間一般では、音楽療法は楽しそうなイメージがありますが、困ったエピソードなどはありますか?

佐藤:以前アメリカで働いていた際、ドイツ系移民の患者さんと音楽療法のセッションをしました。

そのときドイツ人ならだれでも知っている曲をキーボードの伴奏で唄ったところ、彼女の表情が突然変化したのです。

恐怖に満ちた顔で、息づかいも荒くなったのでどうしたのか聞くと、彼女は「ナチスが来る!」と叫んで私の手をつかんだのです。私はこんなにも怯えた人を見たのはそのときが初めてでした。

これは後で知った話ですが、この患者さんはホロコーストを生き延びたユダヤ人だったのです。ですから、ドイツの歌を聴いてトラウマがよみがえってしまったのです。

音楽療法は必ずしも「楽しいもの」ではありません。ときには、音楽を聴いて昔のつらい経験を思い出てしまう患者さんもいます。

音楽療法士はこのような場合どう対応するべきか知らなくてはいけません。対処の仕方によっては、音楽療法をしたことがクライアントにとって逆効果になってしまうからです。

ですから音楽療法を行うには、トレーニングが必要なのです。

インタビュー記事は、全3回にわたってお届けしております。

第3回は、3月27日(金)の12時頃に公開予定です。

※2015年3月27日更新
記事を公開しました。
【特集】あなたの「人を助けたい」の想いは本当ですか?音楽療法士・佐藤由美子さんインタビュー 3/3

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